「いかにんじん」は、初冬に出回る「長にんじん」を使用することと、保存期間を長くするために冬期のみ各家庭で作られ、特に正月には欠かせない料理でありましたが、近年は一年を通して「短いにんじん」が出回るようになり、かつ各家庭に冷蔵庫が普及したため、 一年を通して食べられるようになりました。
また、市内の漬物会社でも製品として作るようになり、一年中福島市内のスーパーマーケット等で売られています。
市内に住む、70〜80代のおばあさん数人に聞き取り調査を行ったところ、「本人のお母さんはもちろん、祖母も作っていた。」とのことなので、100年〜140年位の歴史があると思われます。
「いかにんじん」を食べる地域は、福島周辺(県北地方)に限定 されており、例えば同じ福島県でも郡山市・白河市等では食べられていません。米沢市・相馬市・白石市等、福島市近隣の市では、一部の家庭で食べられていますが、これは「福島から嫁いだ方が伝えた」と言われています。
北海道に「松前漬け」という「いかにんじん」に酷似した郷土料理があり、『どちらが元祖なのか』議論されていますが、「松前漬け」のルーツは、「こんぶいか」(注)であり、「いかにんじん」とはまったく異なる松前地方の郷土料理です。(食物研究家 神田 美枝 氏談)
※昆布とスルメを細く切り、醤油に漬け込んだもので、江戸時代頃からあったようである。戦後、華やかさを演出するために、数の子やにんじんが加えられました。